| 提案者 |
- 筆頭幹事:古池謙人(東京理科大学)
- 幹事:油谷知岐(大阪公立大学)
- 幹事:芦田淳(大阪大学)
- 幹事:森田海(福井工業高等専門学校)
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| 本SIGにおける研究テーマの概要 |
- 近年,AIと学習科学の融合的研究の進展により,学習者の認知状態や知識構造をより精緻に捉えようとする動きが活発化している.しかし,既存の教育・学習支援システムの多くは,学習者の正誤応答や行動ログなど,表層的なパフォーマンス指標に依拠しており,学習者がどのような認知スキーマを形成すべきかを設計対象として明示的に扱う枠組みはまだ確立していない.
一方,認知心理学や学習科学においては,学習の本質は知識の単純な獲得ではなく,既有知識の再構成やスキーマの再編成による概念的理解の変化にあることが指摘されている.この観点から,学習支援システムにおいても,学習者の「スキーマ形成のプロセス」や「学習活動構造そのもの」をモデル化するアプローチが求められている.
本SIG(SIG-SLAM)は,「学習者が形成すべき認知スキーマの明示化と,これとの対応付けを志向した学習活動デザインや支援システム開発に関する研究を推進すること」を目的とする.
これにより,従来の反応適応型な学習支援環境を超え,スキーマと学習活動の統合的モデリングに基づく新たな知的学習支援の枠組みを構築する.学術的には,認知科学・知識工学・生成AI・教育工学を融合し,社会的には,教育現場や企業研修における精緻に設計されたスキル獲得支援・構造的理解支援・カリキュラムデザイン・個別最適化学習への理論的基盤を提供することを目指す.
なお本SIGでは,モデル/設計の役割を重視する立場から,結果データの多寡とは別に,モデル/設計それ自体を学術的に評価可能とするための評価規準(記述様式・論証方法・妥当性観点)を定式化する.そして,成果データに依存しない形でモデル/設計の学術的価値を論じうる評価枠組みの確立を目指す.
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| 本SIGテーマのもとで共有したい学術的「問い」の例 |
- 学習者が形成すべき「認知スキーマ」をどのように設計・形式化できるか?
- 認知スキーマと学習活動の対応関係をどのようにモデル化できるか?
- 学習ログ・発話・生成テキストなどのマルチモーダルデータから,形成されたスキーマやその変容をどのように推定できるか?
- 学習活動設計において,スキーマ構造に基づく最適化や生成AIの活用は可能か?
- スキーマモデリングに基づいた活動・教材・授業設計はどのような教育的効果をもたらすか?
- 人工知能は,学習者とスキーマを共有・発展させる「認知的パートナー」になりうるか?
- モデル/設計段階の成果を論文化する際に,どのような論証と記述があれば学術的に評価可能と言えるか(先行研究との関係づけ,設計仮説の反証可能性,観測・評価計画の明示等)?
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| 本SIGの活動によって、本学会において期待される効果 |
- 本SIG-SLAMの活動は,学習者の認知スキーマと学習活動の構造を一体的に扱うという新しい研究視座を提示するものである.
これにより,従来の「知識量」「正答率」といった表層的指標やそれによる反応適応型の学習環境を超え,学習の概念的構造変化を中心とした知的学習支援の科学を確立することが期待される.
学術的には,以下のような効果が見込まれる:
・認知科学・教育工学・人工知能・知識工学を横断するスキーマ駆動型学習支援の理論的枠組みの構築
・学習活動データ・対話・生成テキストなどを対象としたスキーマ推定・変容分析技術の確立
・スキーマ構造に基づく教材設計・授業設計・学習支援方略の体系化
・生成AIを活用したスキーマ設計・活動デザインの自動化・支援化に関する新たな研究領域の開拓
社会的には,教育現場・企業研修・自己学習環境などにおいて,構造的理解やスキル獲得の過程を可視化・支援する実践的基盤を提供し,学習者中心のAI教育支援や人とAIが協調して知識を構築する学習生態系の形成に寄与する.
さらに,本学会においては,「知識表現」「認知的対話」「学習過程・活動のモデリング」といった人工知能の根幹テーマを再活性化させ,人間の認知構造を理解し,それを共に拡張するAIという新たな知的枠組みを提示することが期待される.
これにより,結果が未確定な萌芽的研究であっても,モデル/設計の学術的価値を論文として適切に記述・審査できる共通の作法(観点・テンプレート)が共有され,設計研究の蓄積と発展が促進される.
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