
本学会は1974年(昭和49年),CAI学会として設立されて以来,本年で50周年を迎えることができました.これはひとえに,長年にわたり学会を支えてこられた先人の先生方のご尽力の賜物であり,心より敬意を表します.また,日々学会活動を支え,多彩な企画・運営にご尽力いただいている理事・評議員の先生方,ならびに会員の皆様に心から感謝申し上げます.
設立以来,本学会は「コンピュータと教育支援による教育全体の探究」を根幹として歩んでまいりました.名称を教育システム情報学会と改めた1995年以降は,情報教育やコンピュータ活用教育を含め,教育内容から方法論に至るまで広範な領域を対象として研究が進められてきました.その中で一貫して大切にされてきたのは「学習者の立場」からの視点です.西之園晴夫先生が学会誌の巻頭言でご紹介頂いた「学習権」に基づく学習者主体の教育の必要性や,岡本敏雄先生が会長就任に際して述べられたインターネット拡大期におけるeラーニングを核とする先進教育システムの研究推進,教育実践の学術的理論化,授業設計のモデル化,新しい教育評価技術の開発の重要性は,今日の「個別最適な学び」や「学修者本位の教育」につながる先駆的な知見と改めて感じます.
技術的課題は,インターネットからAI,XRへと移り変わってきましたが,「先進教育システムを基軸に研究を展開する」という本学会のアイデンティティは不変であり,今後も社会的・学術的に重要であり続けると確信しています.50周年を迎えた今,私たちが果たすべき責務は,先人が蒔かれた種を育み,大きな樹として実を結ばせ,それを次世代へと引き継ぐことです.現在,理事会は若手を中心とした運営体制へとシフトしつつあり,SIG(Special Interest Group)を核としたテーマ別コミュニティの形成や,他学協会との連携を進めています.初等中等教育と高等教育をつなぐ情報教育,医療・看護分野でのデジタル活用,学習データ分析と教学IRなどを重点領域とし,産学連携のもとに実践的成果を生み出していきたいと考えています.特に生成系AIをはじめとする新しい技術を,学習科学の観点から教育システムとして有効に活用していくことは,社会課題の解決に直結するものと期待されます.
会員の皆様におかれましては,研究成果の発表にとどまらず,部会・研究会・産学連携の場で積極的に交流いただきたいと願っています.その積み重ねが学会の知を豊かにし,学術的価値を社会に発信していく原動力となります.60周年,70周年へと歩みをつなぐのは会員一人ひとりの力です.再任にあたり,引き続き皆様と共に「個別最適な学会」を育て,教育システム情報学会を未来へと導いてまいります.どうか今後とも変わらぬご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます.
教育システム情報学会 会長 小松川浩