SIG一覧

第二種SIG

SIG-AID:アカデミックインテグリティと学習デザイン (Academic Integrity in Learning Design)

提案者
  • 筆頭幹事:市川尚(岩手県立大学)
  • 幹事:高橋暁子(千葉工業大学)
  • 幹事:竹岡篤永(事業創造大学院大学)
  • 幹事:根本淳子(明治学院大学)
本SIGにおける研究テーマの概要
  • アカデミックインテグリティ(Academic Integrity)は、学びと研究の信頼性を支える基盤概念であり、正直、信頼、公正、敬意、責任、勇気といった価値に基づく行動原理として国際的に整理されてきた。海外では30年以上にわたり研究が蓄積され、重点が、不正防止や規範遵守から、学習者の主体性や判断力を育成する教育的アプローチへと移っている。一方、日本では体系的な研究や教育実践の蓄積は十分とは言えず、制度整備や注意喚起にとどまる傾向が強い。
    近年、生成AIをはじめとする学習支援ツールの普及により、学習者は自らの学び方や行動選択に、これまで以上の責任を負う状況に置かれている。このような学習環境においては、学習者のエンゲージメントの質を高めていくうえで、学びに向かう誠実性が一層重要になると考えられる。本SIGでは、アカデミックインテグリティを単なる不正防止の問題としてではなく、学習者が自らの学び方を誠実に選択・判断し、その結果に責任を持つ態度として捉える。インストラクショナルデザインをはじめとする教育工学の観点から、日本の教育におけるアカデミックインテグリティの学習デザインについて検討する。
本SIGテーマのもとで共有したい学術的「問い」の例
  • 日本の教育文化に根ざしたアカデミックインテグリティとはどのようなものか?
  • アカデミックインテグリティを学習への態度として捉えた場合の評価はどのようになるか?
  • 発達段階に応じたアカデミックインテグリティを育む学習デザインの原則はどのようなものか?
  • 生成AIの活用は学習者のアカデミックインテグリティにどのような影響を与えるか?
  • 海外のアカデミックインテグリティ研究はどこまで進んでいるのか?
本SIGの活動によって、本学会において期待される効果
  • 本SIGの活動を通じて、アカデミックインテグリティを「不正を防ぐための規範」や「遵守すべきルール」として捉える従来の理解から、学習者が自らの学び方を選択し、その学習過程と成果に責任を持って関与する態度として捉える理論的視点が、本学会において共有されることが期待される。日本では、アカデミックインテグリティに関する研究や教育実践の体系的な蓄積が海外に比べて十分とは言えず、本SIGは、その重要性を学会員に広めるとともに、教育活動や学習環境設計の改善に資する知見を提供する。
    また、生成AIを前提とした学習環境の広がりにより、学習者の関与のあり方や責任の所在が不透明になりつつある。本SIGは、このような状況に対して、「どのような学び方を選択することが誠実な学習と言えるのか」という設計上の問いとして課題を整理する枠組みを提示する。これにより、教育システム情報学会が対象とする学習設計・評価設計・学習環境設計の観点から、生成AI時代の学習をめぐる課題を検討するための学術的基盤の形成が促される。

SIG-DEPR:教育実践研究のデザイン (Designing Educational Practice Research)

提案者
  • 筆頭幹事:天野 慧(グロービス経営大学院)
  • 幹事:平岡斉士(放送大学)
  • 幹事:桑原千幸(事業創造大学院大学)
  • 幹事:中嶌康二(関西国際大学)
本SIGにおける研究テーマの概要
  • 教育実践を対象とした研究は、本学会において「教育実践研究」「実践速報」という論文カテゴリーが設けられており、学術的貢献と実社会の課題解決の両面で重要な役割を担っている。一方で、教育実践研究には固有の方法論的課題が存在する。実験研究やシステム開発研究とは異なり、現実の教育現場を対象とするため、研究者の意図だけで変数を統制することは困難である。また、実践の成果を単なる実践報告に留めず、学術的な知見として一般化するプロセスも容易ではない。
    教育実践を研究として成立させるためには、実践前に学習目標と評価方法を明確に設計し、理論に基づいた介入策を講じて効果を検証することが求められる。これにより、個別の事例に留まらない一般化可能な知見を導き出すことができる。本SIGでは、このような教育実践の意図的な設計と、個別事例から他の実践にも応用可能な知見を導出する問題解決の方法論を「教育実践研究のデザイン」と呼ぶ。特に、教授・学習支援システムを活用した実践研究に焦点を当て、その知見を共有し議論するコミュニティの形成を目的とする。
本SIGテーマのもとで共有したい学術的「問い」の例
  • 実践において直面する問題を解決するためにどのように教育事例を設計すればよいか
  • 考案した設計アイデアを問題解決の手段として機能させるために、どのように教授・学習支援システムやその利活用の方法を設計すればよいか
  • 実践の問題解決を研究成果としてまとめていくために、研究アプローチや手法をどのように採用すればよいか
本SIGの活動によって、本学会において期待される効果
  • 次の2つの観点で本学会における教育実践研究の裾野を広げることに寄与する
  • (1)教育実践研究における方法論・手法の知見を共有し、教育実践論文カテゴリーの多様な展開を促進する。
  • (2)教育実践を論文や学会発表としてまとめたいと考えている会員の研究を支援し、教育実践研究コミュニティの持続的発展に寄与する。

SIG-DTCI:地域課題探究DX (Digital Transformation for Community‑Based Inquiry Learning)

提案者
  • 筆頭幹事:宮下 伊吉(大阪大学)
  • 幹事:鈴木 伸哉(三重大学)
本SIGにおける研究テーマの概要
  • 2024~2025年度における高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)では,専門的な外部人材の活用や大学等との連携などを通じてICTを活用した探究的・文理横断的・実践的な学びを強化する学校などに対して,必要な環境整備のための財政支援が行われている.しかしながら,ICT活用の環境整備だけでは教育DXの実現は困難である.2025年6月,“誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会”という教育DXのミッションの実現を目指すものとして,関係省庁により『教育DXロードマップ』が示されたことで,多様な学びのための学習環境の整備等が今後具体化していくことを期待したい.
    本SIG-地域課題探究DXでは, “多様な学びのための学習環境”に着目し,遠隔地の高校・大学・地域等との連携を前提とした探究学習(主に地域課題に関する探究的で協働的な学び)のあり方についての研究を目的とする.具体的には,デジタル技術を用いた先進的学習支援(生成AIや仮想現実,メタバース等の活用)を踏まえた学習環境の設計および学習プログラムのデザインに関する研究である.
本SIGテーマのもとで共有したい学術的「問い」の例
  • 地域課題探究において,生成AI・仮想現実・メタバース等の先進的学習支援を取り入れた学習環境設計と学習プログラムは,学習者の課題設定力,課題理解度,および学習態度にどのような影響を及ぼすのか?
  • 地域課題探究において,ICTを活用した学習環境は,従来型学習環境と比較して,学習者の課題設定力,課題理解度,および学習態度にどのような差異をもたらすのか?
  • 地域課題探究において,学習者の創造性発揮や潜在的才能の発掘に効果的な学習環境設計と学習プログラムはどのように構築されるべきか?
  • 高大連携の推進や遠隔教育の拡充は,地域の教育リソース格差をどのように是正し,多様な学びの機会を創出する基盤となり得るのか?
  • 文理横断的かつ探究的な学びの成果を可視化・共有するために,どのような地域連携の形態が効果的か?
本SIGの活動によって、本学会において期待される効果
  • 高校・大学・地域社会との連携を通じて,先進的学習支援を取り入れた学習環境および学習プログラムの設計プロセスを明らかにし,地域課題探究DXモデルとして提示することができる.
  • 生成AI・仮想現実・メタバース等を活用した学習環境設計および学習プログラムが,従来型探究学習と比較して学習者の課題設定力・理解度・態度を有意に向上させることを実証的に示すことができる.
  • 生成AI・仮想現実・メタバース等の先進的学習支援を活用し,学習者の能力向上や潜在的才能の発掘に効果的な学習環境設計および学習プログラムのモデルを提示することができる.
  • 教育DXロードマップの政策方向性と整合しつつ,地域課題探究のデジタル変革を学術的に検討し,理論と実践,政策と現場をつなぐ知的基盤を提供することができる.
  • 生成AI・仮想現実・メタバース等の先進技術が,地方創生や持続可能な地域づくりという社会課題と,探究的・協働的な学びという教育課題の双方に貢献し得る可能性を実証的に検証することで,教育システム情報学会の学際的貢献としても期待できる.

SIG-ERS:防災・安全教育 (Education for Resilient Society)

提案者
  • 筆頭幹事:光原 弘幸(徳島大学)
  • 幹事:田中 孝治(金沢工業大学)
  • 幹事:畠山 久(東京科学大学)
本SIGにおける研究テーマの概要
  • 近年,自然・人的災害が頻発・甚大化・多様化してきている.加えて,不安定な社会情勢や急速な技術発展に伴って生じる困難,不安,混乱などに遭遇することも多くなっている.このような時代において,命や財産を守るための防災(減災)・安全は我が国だけでなく全世界にとって,“しなやかに困難を乗り越える社会(Resilient Society)”の実現をめざす重要な課題となっている.その中でも,防災・安全教育は全世代に関係する最重要課題であり,有効な解決策により防災・安全に大きく貢献する.従来から防災・安全教育は実施されてきているものの,形骸化やマンネリ化が指摘されており,新しい取組が急務である.そこで,著しく発展・普及する情報技術・システムが防災・安全教育の充実に果たす役割は大きい.
    防災・安全教育が扱う内容はさまざまな学術領域にまたがり,その学術的価値も高い.例えば,技術領域では,AI(Artificial Intelligence)やXR(Extended Reality)といった最新技術を活用した災害シミュレーションや訓練システムの開発や運用・実践が国際的に活発である.また,災害を目の当たりにしたり安全が脅かされたりする状況においては,人間の内面が複雑に関係することも多く,より良い防災・安全教育を検討する上で人間の心理・認知・行動が重要な要素となる.
    このように防災・安全教育は,現代社会にも学際的にも必要不可欠なテーマである.
本SIGテーマのもとで共有したい学術的「問い」の例
  • 防災・安全教育システム情報学の在り方をどのように明確化・確立していけばよいか?
  • 防災・安全教育システム開発や教育実践の方法論をどのように構築すればよいか?
  • 防災・安全教育システムにAIやXRなどの最新技術をどのように適用・拡張すればよいか?
  • 防災・安全教育における人間の心理・認知・行動をどのようにモデル化・観測・解釈すればよいか?
  • 防災・安全教育をどのように評価し,社会に浸透させていけばよいか?
本SIGの活動によって、本学会において期待される効果
  • 本SIGで扱う防災・安全教育は,本学会の研究カテゴリ表に「防災教育」分野があることからも,重要な研究テーマに位置づけられる.また,教育システム情報学会誌Vol. 35, No. 2(2018年)において,特集号「安心・安全な社会に貢献する教育システム」が組まれ,本SIG筆頭幹事の光原が特集号幹事を務め,解説論文が掲載されているほか,幹事メンバの田中による解説論文と一般論文,畠山による一般論文も掲載されている.また,第43回全国大会(2019年)では「知の共有支援技術で支えるレジリエントな学び」というテーマの下,大会企画パネル討論を企画運営した実績もある.このように,本学会において防災・安全教育を牽引してきた研究者が幹事として本SIGを運営することで,本学会を基軸として,我が国の防災・安全教育の研究・開発・実践を強く推し進めていくことが期待できる.
    さらに,光原と畠山は2017年に国際会議ICCEのワークショップInternational Workshop on ICT for Disaster and Safety Education (ICTDSE)をオーガナイザとして立ち上げ,田中もProgram Committeeとして参画している.本SIGのメンバーはICTDSEのProgram Committeeから構成されており,防災・安全教育の知見を有している.現在のところ,国際的な認知度は必ずしも高くないが(2024年および2025年はオーガナイザの都合等で未開催),この研究テーマを国際的に展開していくという熱意を常に持っている.防災・安全教育の重要性と期待は世界的に高まっており,国際ワークショップ運営のノウハウを活かして本SIGを活発化させれば,防災・安全教育関連の英語論文執筆を促進し,ITEL (Information and Technology in Education and Learning)での論文掲載を通じて,本学会の国際的なプレゼンス向上も期待される.

SIG-RBL:再構成学習 (Recomposition-Based Learning)

提案者
  • 筆頭幹事:平嶋宗(広島大学)
  • 幹事:東本崇仁(千葉工業大学)
  • 幹事:堀口知也(神戸大学)
本SIGにおける研究テーマの概要
  • 生成AIの普及により、学習者は「答え」や「説明」を即時に得られる一方で、それらを自らの理解として組織化し直すための意味構成・構造化・再編成の過程は、依然として学習者自身に委ねられている。本SIGは、学習を内的表象の再構成(recomposition)として捉え、その促進のために学習者が外的表象を操作・再構成する外的表象の再構成(reconstruction)を学習活動として設計する枠組み、すなわち Recomposition-Based Learning(RBL) を中核概念として据える。学習における再構成の役割は、外的表象を分解した部品(単独の意味)と、再構成によって構造に位置づけられた部品(構造内での意味・役割)の間に生じる意味的差分を学習者が埋めていく過程にあり、構成主義的学習観に基づくものといえる。
    またRBLにおいて外的表象は、単なる提示物ではなく、
    • 学習者が操作可能であり、
    • 意味構成の過程が可視化され、
    • 協調学習においては可視的・操作的共有(visible and operational sharedness)を通じて共通基盤(grounding)の形成を支援しうる媒体
    として位置づけられる。
    本SIGは、RBLを理論・設計・分析・評価の観点から体系化し、学習支援研究における設計知の蓄積と再利用を促すことを目的とする。
    本SIGが扱う研究テーマは、学習者の理解を「内的表象の再構成(recomposition)」として捉え、その実現を支える学習活動として「外的表象の再構成(reconstruction)」を中核に据えた学習観・設計原理・分析枠組みの確立である。
    具体的には、
    (i) 対象領域の知識構造を分析し,
    (ii) その構成要素(部品)と構造を外的表象として定義し,
    (iii) 部品の組立・差分・再構成を学習活動として設計し,
    (iv) 操作過程や生成物を通じて学習者の意味構成過程を可視化し,内的表象の洗練を導く方法
    を中心に検討する。
    さらに、協調的学習場面においては、外的表象の可視的・操作的共有を通じて、学習者間の理解のすり合わせ(grounding)を支援する設計と、その成立条件・効果を扱う。
    なお本SIGでは,外的表象の再構成(reconstruction)を通じた内的表象の再構成(recomposition)という学習過程を,設計可能な理論として定式化し,実践・システム・分析へ一貫して接続できる研究枠組みとして整理する。
本SIGテーマのもとで共有したい学術的「問い」の例
  • 概念・理論:reconstruction(外的表象の再構成)とrecomposition(内的表象の再構成)の関係を,学習理論としてどのように記述できるか。
  • 設計:部品(構成要素)の粒度・制約条件・操作系列(組立,入替,差分検討,統合など)は,学習過程の質にどのような影響を与えるか。
  • 可視化・分析:外的表象の操作ログや生成物から,学習者の意味構成過程や誤概念の構造をどのように推定・記述できるか。
  • 協調・共有:visible and operational sharedness を成立させるための表象設計・操作設計・ファシリテーション条件は何か。
  • 生成AIとの接続:生成AI出力を「素材」として扱うとき,人間側の再構成を促す学習活動設計と評価はどのようにあるべきか。
  • 中核的な問い:どのような外的表象の部品化・制約・操作課題が,学習者の再構成過程を促進し,かつその過程を観測・分析可能な形で露出させるのか。
本SIGの活動によって、本学会において期待される効果
  • 本SIGの活動により,学習支援研究は「成果(正答率等)の差が出たか」にとどまらず,理解に至る過程をどのように設計し,どのように観測・分析し,どのように設計知として蓄積するかという観点で議論できるようになる。
    これにより,萌芽的・挑戦的な設計研究であっても,
    • 外的表象と操作設計の妥当性
    • 再構成過程の観測可能性
    • 協調的共有の設計条件
    を明確に記述し,相互比較や再利用が可能となる。
    これにより,学習支援研究において,成果の有無だけでなく,再構成過程の設計原理・分析指標・協調的共有(visible and operational sharedness)に基づく議論の共通基盤が形成され,設計知の再利用と蓄積が促進される。

SIG-PS:心理的安全性 (Psychological Safety)

提案者
  • 筆頭幹事:田中洋一(仁愛女子短期大学)
  • 幹事:山川修(Safeology研究所)
  • 幹事:多川孝央(筑紫女学園大学)
本SIGにおける研究テーマの概要
  • ハーバードのエイミー・C・エドモンドソン⽒が提唱した⼼理的安全性(psychological safety)とは、チームのメンバーがリスクを冒し、自分の考えや懸念を表明し、疑問を口にして、間違いを認めてもよく、そのいずれもネガティブな結果を恐れずにできると信じていることである。この考えは、Googleの「成功するチームの構築に最も重要なものは⼼理的安全性」というプロジェクト結果によって広まった。ユーリア・エンゲストロームの探究的学習では、正当な学習の動機づけとして、認知的コンフリクト(⽭盾,葛藤,対⽴)が前提となる。そのためには、モヤモヤだけでなく、⾃⼰のミスや他者への改善提案を伝えられる⼼理的安全性が教育や研修の場でも⼤切である。これらはStudentエージェンシー(変⾰を起こすために⽬標を設定し⾏動する能⼒)の育成にも重要な概念といえる。そこで、本SIGでは、教育における⼼理的安全性の必要性と課題に関する理論的および実践的研究を支援する。
本SIGテーマのもとで共有したい学術的「問い」の例
  • 教育現場において心理的安全性をどのようにつくればよいのか
  • 心理的安全性をどのように測定すればよいのか
  • 他の能力(創造性等)と心理的安全性に関係はあるのか
  • 海外における心理的安全性を高める教育実践例には、どのようなものがあるのか
  • 生成AIによって、心理的安全性な場は、どのようにかわるのか
本SIGの活動によって、本学会において期待される効果
  • 下記2つの観点で本学会における教育実践研究に貢献する。
    ①「教育現場において心理的安全性を高める方法の体系化」
    教育・研修において心理的安全性の向上に寄与した教授方法や情報システムを共有し、ワークショップ等を実施する。
    ②「教育現場における心理的安全性を測定する方法の体系化」
    心理尺度や生体情報を用いた心理的安全性の測定方法を共有し、ワークショップ等を実施する。
  • 過去にJSiSEにて実施している活動
    •JSiSE全国大会における企画セッションの開催:
    2025年度「教育における⼼理的安全性の必要性と課題」、2022〜2024年度「エージェンシー育成のための社会情動的スキルに関する研究」、2020〜2021年度「SEL(Social and Emotional Learning)の高等教育への適応」、2018〜2019年度「対話(dialogue)は学習にどのような役割を果たしているのか」
    •JSiSE全国大会におけるプレカンファレンスの開催:
    2025年度「教育現場での心理的安全性のつくりかたワークショップ」、2022〜2024年度「エージェンシー育成のための社会情動的スキルワークショップ」、2020〜2021年度「SELの高等教育への適応」、2018〜2019年度「対話は学習にどのような役割を果たしているのか」
    •Safeology研究所のnoteによる安心安全に関するコラム

SIG-SLAM:認知スキーマ・学習活動モデリング (Cognitive Schema and Learning Activity Modeling)

提案者
  • 筆頭幹事:古池謙人(東京理科大学)
  • 幹事:油谷知岐(大阪公立大学)
  • 幹事:芦田淳(大阪大学)
  • 幹事:森田海(福井工業高等専門学校)
本SIGにおける研究テーマの概要
  • 近年,AIと学習科学の融合的研究の進展により,学習者の認知状態や知識構造をより精緻に捉えようとする動きが活発化している.しかし,既存の教育・学習支援システムの多くは,学習者の正誤応答や行動ログなど,表層的なパフォーマンス指標に依拠しており,学習者がどのような認知スキーマを形成すべきかを設計対象として明示的に扱う枠組みはまだ確立していない.
    一方,認知心理学や学習科学においては,学習の本質は知識の単純な獲得ではなく,既有知識の再構成やスキーマの再編成による概念的理解の変化にあることが指摘されている.この観点から,学習支援システムにおいても,学習者の「スキーマ形成のプロセス」や「学習活動構造そのもの」をモデル化するアプローチが求められている.
    本SIG(SIG-SLAM)は,「学習者が形成すべき認知スキーマの明示化と,これとの対応付けを志向した学習活動デザインや支援システム開発に関する研究を推進すること」を目的とする.
    これにより,従来の反応適応型な学習支援環境を超え,スキーマと学習活動の統合的モデリングに基づく新たな知的学習支援の枠組みを構築する.学術的には,認知科学・知識工学・生成AI・教育工学を融合し,社会的には,教育現場や企業研修における精緻に設計されたスキル獲得支援・構造的理解支援・カリキュラムデザイン・個別最適化学習への理論的基盤を提供することを目指す.
    なお本SIGでは,モデル/設計の役割を重視する立場から,結果データの多寡とは別に,モデル/設計それ自体を学術的に評価可能とするための評価規準(記述様式・論証方法・妥当性観点)を定式化する.そして,成果データに依存しない形でモデル/設計の学術的価値を論じうる評価枠組みの確立を目指す.
本SIGテーマのもとで共有したい学術的「問い」の例
  • 学習者が形成すべき「認知スキーマ」をどのように設計・形式化できるか?
  • 認知スキーマと学習活動の対応関係をどのようにモデル化できるか?
  • 学習ログ・発話・生成テキストなどのマルチモーダルデータから,形成されたスキーマやその変容をどのように推定できるか?
  • 学習活動設計において,スキーマ構造に基づく最適化や生成AIの活用は可能か?
  • スキーマモデリングに基づいた活動・教材・授業設計はどのような教育的効果をもたらすか?
  • 人工知能は,学習者とスキーマを共有・発展させる「認知的パートナー」になりうるか?
  • モデル/設計段階の成果を論文化する際に,どのような論証と記述があれば学術的に評価可能と言えるか(先行研究との関係づけ,設計仮説の反証可能性,観測・評価計画の明示等)?
本SIGの活動によって、本学会において期待される効果
  • 本SIG-SLAMの活動は,学習者の認知スキーマと学習活動の構造を一体的に扱うという新しい研究視座を提示するものである.
    これにより,従来の「知識量」「正答率」といった表層的指標やそれによる反応適応型の学習環境を超え,学習の概念的構造変化を中心とした知的学習支援の科学を確立することが期待される.
    学術的には,以下のような効果が見込まれる:
    ・認知科学・教育工学・人工知能・知識工学を横断するスキーマ駆動型学習支援の理論的枠組みの構築
    ・学習活動データ・対話・生成テキストなどを対象としたスキーマ推定・変容分析技術の確立
    ・スキーマ構造に基づく教材設計・授業設計・学習支援方略の体系化
    ・生成AIを活用したスキーマ設計・活動デザインの自動化・支援化に関する新たな研究領域の開拓
    社会的には,教育現場・企業研修・自己学習環境などにおいて,構造的理解やスキル獲得の過程を可視化・支援する実践的基盤を提供し,学習者中心のAI教育支援や人とAIが協調して知識を構築する学習生態系の形成に寄与する.
    さらに,本学会においては,「知識表現」「認知的対話」「学習過程・活動のモデリング」といった人工知能の根幹テーマを再活性化させ,人間の認知構造を理解し,それを共に拡張するAIという新たな知的枠組みを提示することが期待される.
    これにより,結果が未確定な萌芽的研究であっても,モデル/設計の学術的価値を論文として適切に記述・審査できる共通の作法(観点・テンプレート)が共有され,設計研究の蓄積と発展が促進される.